マイ・ワンダー・スタジオ
ジェイクおじいちゃんの お話シリーズ:海の仲間たち:クリスマスの仲良し友だち
月曜日, 12月 19, 2022

ジェイクおじいちゃんの お話シリーズ:海の 仲間たち:クリスマスの 仲良し友だち

 クリスマスの 前日、トリスタンと シャンタルは、家族や 友だちのために クリスマスカードを 作っていました。

 「トリスタン、青い クレヨンを 使いたいんだけど。」と、シャンタルが 言いました。

 「ぼくも 使いたいんだ。」と、トリスタン。

 「でも、今 使って ないでしょ。」

 「これから 使うんだよ。」

 シャンタルは、手を のばして 青い クレヨンを つかみました。

 「返してよ!」 トリスタンが おこって 言いました。

 「今 使ってるの。終わったら 返すから。」と、シャンタル。

 「今すぐ 返して!」

 トリスタンは、シャンタルが 使っていた クレヨンを ひったくりました。その せいで、シャンタルの カードの はしから はしまで、青い 線が ついて しまいました。

「何、これ!」 そう 言って、シャンタルは 泣き始めました。

 「一体、どう したんだい?」と、ジェイクおじいちゃんが たずねました。

 「トリスタンが わたしの カードを だめに しちゃったの!」 シャンタルが 泣きながら 言いました。

 「シャンタルの せいだよ。クレヨンを 取ったのが 悪いんだ。」と、トリスタン。

 そこで、ジェイクおじいちゃんが 言いました。「そうだ。シャロと クリップが ケンカに なった 時の お話を して あげようか? おたがい もっと 分かり合えるように なるかも しれないよ。」

* * *

 「この クリスマスの かざり付けは、ここに かけようよ。」と、ゴビーが 言いました。

 バダーじいさんは カラフルな 海草の はしを 持ち、ゴビーは 反対の はしを 持って、かざり付けを しました。

 「こんな 感じで どうだい、カミール?」と、バダーじいさんが たずねました。

 「いいんじゃ ない。」 うかない 顔で、カミールが 答えました。

 「気に 入らないんだね?」 ゴビーが 心配そうに 言いました。

 「そんな こと、ないわ。」と、カミール。

 「尾の キズが いたむのかい?」と、バダーじいさんが たずねました。

 「ううん、だいじょうぶよ。動かない 限りはね。」と、カミール。

 「じゃあ、一体 どう したんだい?」

 カミールは ため息を つきました。「ベッドに いなくても よかったらなあ。いっしょに かざり付けも したいし、楽しみたいのに。だけど、できないんですもの・・・ケガした 尾の せいよ。」

 カミールは2日前、サンゴの そばで 遊んでいた 時、大きな サンゴの 破片が 落ちて きて 尾に 当たったので、ケガを して しまったのです。カミールにとって、クリスマスは いつも、特別な 時でした。尾を ケガして ベッドに いるなんて、ちっとも 面白く ありません。カミールを 元気づけようと して 友だちが 来て くれたのですが、それでも うかない 様子です。

 その時、中庭から、「ガッチャーン!」という 音と 共に、おこった どなり声が 聞こえて きました。

 「どう したのかしら?」と、カミール。

 「シャロと クリップだ。」と、ゴビー。

 「何か 問題が あるようだね。ちょっと 様子を 見て くるよ。」と、バダーじいさんが 言いました。

* * *

 カニの クリップと タツノオトシゴの シャロは、カミールの 部屋の かざり付けを するために、貝がらや サンゴや 色とりどりの 海草を 集めて いました。シャロは、見つけた ものを 早く カミールに 見せたくて たまりません。その一方、クリップは シャロに 対して いらいらして いました。

 カミールの 家に 近付くと、シャロが 大声で 言いました。「ぼくが 見つけた もの、見て!」

 2人で 集めた ものを カミールに 見せようと、シャロが はね上がろうと すると、クリップが シャロの 尾を つかんだので、シャロは ドサッと 転んで しまいました。それで、持っていた ものが 全部、海底に 散らばって しまいました。

 「クリップ! なんて こと するんだよ!」

 「いい 気味さ!」

 「何で そんな こと するんだよ?」 シャロは プンプンしています。

 「シャロは、何もかも 自分が 集めたみたいに 言ってるけど、もう うんざりだよ。君だけじゃ なくて、2人で 集めたんじゃ ないか! カミールのために あれや これやを 集めたなんて、ぼくが 見つけた ものだって、あるんだぞ。」

 「そんな こと、言って ないよ!」 シャロが 言い返しました。

 「言ってるさ!」と、クリップ。

 クリップと シャロは、押し合いへし合いの ケンカに なりました。

 「クリップ! シャロ! いいかげんに しなさい!」 バダーじいさんが きっぱりと 言いました。

 シャロは クリップを はなし、ふてくされて すわりました。クリップは はさみを 組みながら、おこって うなりました。

 「今日は 2人とも、ウマが 合わないようだね。」と、バダーじいさん。

 「クリップの せいだよ。」と、シャロが 言いました。

 「ちがうよ!」と、クリップが 言い返しました。

 「だれの せいかなんて、聞いて ないぞ。そんな ことを 言い合っても、何の 役にも 立たないだろう。言い争ったり ケンカしたり しないで 解決する 方法を 見つけないとな。だが、そのためには まず、2人とも、おたがいの 思っている ことに 耳を かたむけないと いけないよ。いいね?」

 シャロと クリップは うなずきました。

 「何が 問題なのか、まずは、クリップから 説明して くれるかい?」と、バダーじいさんが 言いました。

 それで、クリップが 話し始めました。「朝から ずっと、シャロは、カミールのために 何を 見つけるかとか、ぼくよりも ずっと すてきな サンゴを 見つけるぞとか、言ってるんだ。最初は 気に ならなかったけど、いざ ぼくが 見つけた ものを 拾おうと すると、シャロが パッと 来て、先に 取っちゃうんだ。やめてよって 言っても、聞いて くれないんだ。

 ぼくも、カッとなる べきじゃ なかったんだろうけど、どうしたら いいか 分からなくて、いらいらしちゃったんだ。」と、クリップが 言いました。

 「なるほどな。」 そう 言うと、バダーじいさんは シャロの ほうを 向いて 言いました。「クリップを いやな 気持ちに させて いたって、気が 付いたかい?」

 シャロは うなずきました。「ぼくは ただ、カミールのために 何か したかっただけなんだ。別に、クリップを おこらせようと していた わけじゃ ないんだけど・・・おこらせちゃったみたいだね。」

 「さてと。これで いいぞ!」と、バダーじいさんが 声を 上げました。

 シャロと クリップは 2人とも、わけが 分からないと いった 顔で バダーじいさんを 見ました。

 「どういう こと?」 クリップが たずねました。

 「2人とも、どうして おこって いるのか 分かったから、すぐに 仲直り できるだろう。」

 シャロは ため息を ついて 言いました。「クリップ。さっきは ごめんね。そんなに いやな 気分に させてるって 気が 付いていれば、あんな ふうには しなかったよ。」

 「ぼくも、おこったり して、ごめんね。ゆるして くれるかい?」

 「もちろんだよ。」と、シャロ。

 2ひきは、仲直りするのを 助けてくれた バダーじいさんに お礼を 言いました。

 「さあさ、カミールを これ以上 待たせては いかんから。」と、バダーじいさんが 言いました。

* * *

 「お帰りなさい!」 カミールが うれしそうに 言いました。

 「クリップと ぼくとで、面白い ものを たくさん 見つけて きたよ。」と、シャロが 言いました。

 サンゴや 貝がら、色とりどりの 海草を ベッドの 上に 広げると、5人の 仲間たちは、それぞれの ものを カミールの 部屋の どこに かざるかを 決めました。

 「みんな、すてきな 友だちで いてくれて、本当に ありがとう。ケガした せいで、クリスマスは すごく たいくつに なっちゃうと 思って いたけど、みんなの おかげで、すごく 楽しく なったわ。」と、カミールが 言いました。

 「カミールだって、ぼくたちが こまった 時には、いつも 助けに なって くれてるよ。」と、シャロ。

 「メリークリスマス、カミール。友だちの みんなも、メリークリスマス。」と、クリップが 言いました。

* * *

 「自分の ことばかり 考えてちゃ だめだったね。その クレヨンは まだ 使わなかったし、かして あげた ほうが よかったね。」と、トリスタンが 言いました。

 「わたしも、つかみ取ったり しちゃ いけなかったわ。トリスタンが 使い終わるまで、他の 色を 使っていれば よかったんだもの。ごめんね。」と、シャンタル。

 「さあ、腹を 立てたり、ケンカしたり しないで 解決する 方法は あるって、分かったね。」と、ジェイクおじいちゃん。

 「カードを 仕上げても いい?」と、トリスタン。

 「もちろんだとも! それに しても、きれいな カードだね。きっと、家族の みんなも 喜んで くれるよ。」

教訓:

言い争ったり ケンカを しても、問題は 解決しない。おたがいに、もっと 腹が 立って しまうだけだよ。だけど、思いやりを 持つなら、問題は ずっと 簡単に 解決できるよ。

文:カチューシャ・ジュスティ 絵:アグネス・リメア 彩色:ダグ・カルダー デザイン:ロイ・エバンス
掲載:マイ・ワンダー・スタジオ Copyright Ⓒ 2008年、オーロラ・プロダクションAG、スイス、不許複製
ダウンロード
タグ: 海の仲間たち, コミュニケーション, 友情, 親切と礼儀, クリスマス, 子供のための物語, ジェイクおじいちゃんのお話シリーズ